西表エトセトラ 自然・生命(野生植物)
自然 生命「野生植物」
自然
西表島は1972年(昭和47年)に日本で24番目の国立公園(西表石垣国立公園)に指定された。 その自然の中で学術的にも貴重な動植物が数多く生息してしており、イリオモテヤマネコをはじめ、カンムリワシ、
セマルハコガメ、キシノウエトカゲや仲間川、浦内川マングローブ林、サキシマスオウノキ、ヤエヤマヤシなど多く の天然記念物の指定を受けており、自然の豊さと貴重な価値を物語っている。
2021年7月に世界自然遺産に登録された。
また陸地に限らず、島の回りをサンゴ礁が囲み 約200種類ものサンゴが生息している、中でも最大級のアザミサ ンゴはまさに自然が長い年月をかけて創りだした巨大な建造物とも例えられる。
サンゴ礁のまわりにはチョウチョウ魚の仲間から巨大なマンタ(オニイトマキエイ)まで大小さまざかな海洋生物 が生息している。
日本で最も多種多様な生命が存在している所が「西表島」なのである。
サキシマスオウノキ
サキシマスオウノキ(先島蘇芳木)は、亜熱帯のマングローブ林のあるような湿地の内陸側に生育し、日本では奄美大島、沖縄、石垣島、西表島などに分布する。大きな板のような根(板根)が特徴で、かつてはこの板根を切り出して船の舵として使用した。
板根を持つ樹木は他にも存在するが、サキシマスオウノキは群を抜いて立派で仲間川上流には、樹齢400年を超える最大級の固体が発見されている。〔天然記念物〕
名前のサキシマスオウノキ(先島蘇芳木) は、染料として利用されるスオウ(蘇芳木)に由来している。
ヤエヤマヤシ
ヤエヤマヤシ(ヤシ科ヤエヤマヤシ属)は、世界でも類を見ない一属一種の珍しいヤシで、生息域は極めて限られており、ここ西表島では星立と仲間川中流域のウブンドルの2箇所と、他は石垣島の米原のみとなり、この三箇所だけに自生する。
高さは20m以上にもなり、葉の長さは3mくらいにもなる。〔天然記念物〕
ヤエヤマハマゴウ
ヤエヤマハマゴウ(八重山浜栲:クマツヅラ科ハマゴウ属)は、琉球列島全体でも石垣島に1ヶ所、西表島(舟浮集落)に4ヶ所しか自生していない非常に珍しい植物。ミツバハマゴウの変種で葉が5枚からなる複葉を持つのが特徴で海岸沿いに自生する。〔天然記念物〕
マングローブ
マングローブとは、熱帯地方の河口付近に限って発達してして出来た木本性植物群をいう。熱帯地方の河口付近は、干潮時には外気にさらされ、満潮時には海水に浸る。このような特異な環境の中で生息し、
またこのような場所だけに限られて生息する植物群(木本性)がマングローブ(マングローブ林)なのである。西表島でのマングローブを構成する植物としては、オヒルギ、メヒルギ、ヤエヤマヒルギ、ハマザクロ、ヒルギモドキ、ヒルギダマシ、ニッパヤシの
7種類がが知られている。これらの植物は特殊な環境で生息しているため、
他の植物には見られない特異な形体をしている。塩泥地では根腐れを防ぐために呼吸根が発達していたり、タコの足のような支柱根を張りめぐらしてしっかりと本体を支えている。 さまざまな環境に適応した姿であり、たいへん興味深い。
ニッパヤシ
湿地やマングローブ林に群生する無茎のヤシでマングローブ林を構成する樹種の一つである。高さ3mの葉を持ち、泥(地面)から葉までの距離が非常に短いとの特徴を持つ。
特に船浦のニッパヤシは自生地の北限となっており、学術上でも重要な意味を持つため植物保護群落に指定されている。〔天然記念物〕
ヤエヤマヒルギ
ヤエヤマヒルギ(八重山蛭木:ヒルギ科ヤエヤマヒルギ属)マングローブを構成する代表的な樹種で比較的に海寄りに生育する。川の下流から河口で大きな群生林を観察することが出来る。たこ足状の支柱根が特徴的で干潮の際によく観察することができる。日本では沖縄諸島、宮古島、八重山諸島に広く分布し北限は沖縄本島である。
オヒルギ
オヒルギ(雄蛭木:ヒルギ科オヒルギ属)マングローブを構成する樹種のひとつ。別名アカバナヒルギ(赤花蛭木、赤花漂木)ヤエヤマヒルギ同様に下流から海よりに生育するが、メヒルギやヤエヤマヒルギの内側(内陸側)に群落を作り、その内陸側は陸地との境目まで生育し背が高く成長する。日本では奄美大島以南の南西諸島に分布し奄美大島が北限である。尚、徳之島では過去に記録はあるが、現在では分布を確認できない。
メヒルギ
メヒルギ(雌蛭木:ヒルギ科メヒルギ属)マングローブを構成する樹種のひとつ。別名リュウキュウコウガイ。川の下流から河口に生育するが、大きな群落はなく単体から小規模の群落が見られて程度である。オヒルギに対してメヒルギと呼ばれるのは、本種の胎生種子が、オヒルギよりも細く女性的であることに由来するとされている。
日本では、沖縄県及び鹿児島県に分布し、世界で最も北に分布するマングローブ植物で、鹿児島県喜入町の群落が最北とされている。
ヒルギモドキ
ヒルギモドキ(蛭木擬:シクンシ科ヒルギモドキ属)マングローブを構成する樹種のひとつ。マングローブ林の中では最も内陸に生育し砂質の場所を好む。 世界に広く分布する樹種であり沖縄本島が世界分布の北限である。西表島では環境破壊の影響で自生地が減り個体数が減少しており日本国内においても個体数が非常に少ない。
環境省レッドリスト絶滅危惧ia類(cr)にも指定されている。
ハマザクロ
ハマザクロ(浜柘榴:ハマザクロ科)マングローブを構成する樹種のひとつ。別名はマヤプシギと呼ばれ和名ではこちらの方が一般的とされおり、その由来は西表島の方言とされている。
マングローブ林の中では最も海寄りに生育し特徴ある「筍根」と呼ばれる根を持つ、浅く広く張り巡らせれた根から呼吸根を多数出すその姿がタケノコに似ていることから由来すると考える。また西表島の方言でマヤプシギとは「マヤ」は猫を指し「プシキ」は尻尾を指すことから、この呼吸根の形を猫の尻尾に見立てて呼ばれたとの説がある。日本国内のマングローブ7種の中で最も南に分布し、西表島の東部を中心とした生息地で保護が行われている。沖縄県版レッドデータブック
– 準絶滅危惧 (nt)に指定されている。